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NEOMの壮大な構想の中でOXAGONがどのような位置づけにあるか、また、プロジェクトの成功にどう不可欠なのかを説明してください。
OXAGONは、産業の中心地であり、統合された港、物流施設でもあります。貿易というと、商品や食品や他の物の輸出入ですが、大半の場合、船で運ばれてきます。この施設は世界でも最先端の施設で、NEOMに関わるすべての人に途方もない利益をもたらします。
たとえば店頭で商品を探している消費者、店に陳列する商品を探す小売店に利益をもたらします。あるいは企業は自社が輸入した品、消耗品、完成品や仕掛品を求めていますし、輸出をします。すべては港にかかっいるのです。重要な役割を果たしているのです。
OXAGONは、最初に稼動する大規模な開発であり、持続可能性から居住性まで、NEOMのすべての価値を具現化するとともに、初めのコンセプトを実証する。とりわけ水素製造や水の製造など、大規模な活動の拠点となっています。モジュール建築技術を用いて、宇宙などの他の産業も含まれるようになります。
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チームの世界初の取り組みとは何ですか?
世界初となる単一企業、単一の規制計画のもとに統合された港湾・物流ハブで、世界各地へのさらに迅速でシームレスな貿易を促進します。これは非常に重要なことであり、私たちが行っているすべてのことの根底にあると思います。世界初の産業都市であり、優れた居住性を提供することを目的としています。それが何といっても第一です。
さらに水深600mの紅海の上に都市の半分が浮かぶ、世界最大の浮体構造物を建設中です。開発を八角形の形に集中させ、その半分を海に浮かべることで、周辺の土地や海岸線への影響を意識的に最小限に抑えることを意図しています。
加えて世界最大級の水素製造施設を備え、水素経済の基盤を形成する予定です。それから、世界最大の自動車のない都市を建設する予定です。自家用車は一切存在しないでしょう。
つまり、Oxagonには多くの初めての試みが組み込まれており、それは新しい技術に基づいています。ただし、既存の技術を適応させる必要もあります。例えば浮桟橋は、既存の技術を使って誰もやったことがないことをやっているわけです。
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OXAGONはベストインクラスのポートシティとなることを目指していますが、その詳細と実現方法をお聞かせください。
いわゆる港湾都市を名乗りたいとは思っていません。むしろ、港や物流拠点を中心とした都市環境で、優れた居住性を提供します。立地の点や、食糧生産であれ、レジャーであれ、輸送であれ、海を中心とした生活という点では、臨海都市と言えるでしょう。実際、私たちは海の恵みとそれに伴うすべてのものに大きく依存することになるでしょう。ここやこの一帯が比較的涼しいのもそのひとつです。
輸出入品の輸送速度で言えば、最高レベルだと思います。速度は生産性を向上させます。無駄を省き、運転資金を最小限に抑え、ジャストインタイムのサプライチェーンに必要なすべての利点を提供します。商品がコンテナ船から工場に届くまでの時間を、12~24日ではなく、12~24時間に短縮することで、サプライチェーンの時間を2~3週間短縮します。
他にも、居住者にとっての優れた居住性やスマートな規制環境など、クラス最高のベンチマークとなる要素があり、中東地域で最も優れた場所であることは間違いありません。
さらに、イノベーション・キャンパスでは、製造業者がビジネスをインダストリー1.0、2.0、3.0からインダストリー4.0、さらにその先の次世代へと移行させるためのサービスやアドバイザリー機能を提供していきたいと考えています。これは、私たちが注目しているすべての産業に共通する意図です。
7つの製造業集団があります。その中には、現代的な建設方法、先進的なモビリティ、再生可能エネルギー、液体を排出しない淡水化などが含まれます。宇宙や食料生産、健康などの分野で活躍するロボットはもちろんのことです。私たちが次世代の製品を生み出そうとしているすべての分野においてです。OXAGONを中心としたイノベーション、リサーチ、ディストリビューションは、すべての産業を改革することを目指しています。
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再生可能エネルギー、水、循環型経済の組み合わせは非常に魅力的に感じるものです。現場ではどのようにとらえているのかを簡単に説明していただけますか?
再生可能エネルギーは、結局のところ太陽と風で始まります。風力発電所や太陽光発電所に接続して、グリーン電力が私たちに届くようにします。また、紅海沿いに大規模な水素製造施設を建設しています。そのグリーン電力で作られた脱塩水と、電気の組み合わせです。
また、その際に出るブライン(塩水)も様々な製品に加工されます。その海水からミネラルや有用なものをすべて抽出する予定で、基本的には海に水が戻ることはありません。すべてが使える素材に生まれ変わります。海水には多くのものが含まれているので、これを大規模に行うことで、非常に収益性の高い事業になると思います。
あとは、水素製造時の酸素があります。温室では、酸素が豊富な環境を提供し、成長をサポートします。また、水素はエネルギー貯蔵媒体として機能すると同様に、アンモニアにも変換されます。そして、変換したアンモニアを輸送したり、輸出したりすることができます。つまり、サウジアラビア王国自体が、石油の輸出からアンモニアの輸出へと移行するのです。
アンモニアは以前からの疑問にも答えてくれます。つまり「再生可能エネルギーをどうやって貯めるのか?」ということです。もちろん、風力や太陽光ではない別の形にする必要があるので、アンモニアがその選択肢になります。また水素は、多くの産業用途や、バッテリーでは不十分な輸送用途に不可欠です。そのため、水素の燃焼が重要になります。
最終的にはその流れの中で、水素に関する多くの技術が証明されることになります。こうした製品をここで製造するためのクリティカルマスを生成することができます。私たちには、豊富な水素源があります。それをNEOMで使い、世界中に輸出することができます。
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モジュール建築はどのように活用され、何が達成できますか?
モジュール建築は、建築を設計するだけでなく、住宅や商業施設の設計においても、私たちの戦略の中核をなすものです。宿泊施設を開発することになりますが、これらはすべて工場でモジュール化して作られます。
モジュール建築には様々なメリットがあります。まず第一に、その品質とスピードです。これを工場で行うことができれば、品質管理が可能で反復可能なプロセスを行うことができ、無駄を最小限に抑えるように計画することができます。工場での作業を最大化し、現場での作業を最小化することになります。また、現場の準備や作業のスピードを上げることで、大規模な建築現場に何万人もの労働者を配置するのではなく、工場で高い効率性を実現し、現場では比較的シンプルなプロセスで建物を立ち上げることができます。
もう一つの要素は、必要とされる仕事を考えると、建設業の仕事は一過性というのが多いものです。私たちが行っていることの一つは、一般的に出稼ぎ労働者や現場を転々としている人たちが行っている一過性の仕事について、そのポストを工場内に移すことです。その結果、安定した環境が生まれ、労働者の生活水準も向上します。環境をコントロールした場所で働くことができるのです。つまり、私が参加しているとして、レンガを積んだり、タイルを敷き詰めたりすることを、真夏に 45度の暑さの中ではなく、28度の工場の中で行うことができるのです。最終的には、より健康的で、より安全で、より生産的になります。
究極的には、OXAGONでモジュール建築を採用することで、産業発展の起爆剤となるはずです。その後、主要なOEMメーカーや部品メーカーとの間で、クリティカルマスを構築します。サウジアラビア王国のニーズ、地域のニーズ、そして世界のニーズに応えるモジュール建築の巨大な輸出拠点となるのです。
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インダストリー4.0がもたらす新たな成長の機会とは何でしょうか?
一部のセクターではすでに完全導入に近づいていますが、実際に達成しているところは非常に少なく、産業プロセスを見直す必要があります。データを収集し、そのデータを使ってプロセスのパフォーマンスを改善する必要があります。アジリティが高まるので、工場や生産システムがインダストリー4.0に基づいて設計されていればいるほど、小さいバッチでも同じレベルの効率で運用できるようになります。
これにより、廃棄物や運転資金を削減することができます。市場投入までの時間が短縮され、サプライチェーンも短縮できるようになります。そのため、東南アジアで作られた4週間船上に置かれるような大規模なバッチではなく、小規模なバッチを作ることができるのです。生産活動がより機敏になり、お客様への対応力が高まります。より少ない資源でより多くのことを行うことができるということであり、これは持続可能性の要素でもあります。
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先進のロボティックスにより、私たちの生活様式は変わるかもしれません。OXAGONの革新的な青写真は、世界の他の国々でも採用されると思いますか?
ロボットの利用拡大は避けられません。私たちは、サプライチェーンや都市をロボットに適した方法で設計すれば、大きなメリットが得られることを示すつもりです。例えば、米国の「障害を持つアメリカ人法」が建物の設計を変えて階段を最小限にし、車椅子でも利用できるスロープを確保したのと同じように、これからはロボットに優しい建物を作っていくことになるでしょう。つまり、脚のついたロボットを作るのは非常に難しいのですが、車輪のついたロボットにも優しい建物にすることができるようになるのです。
その上にコグニティブ・シティが加わり、ロボットが特定の場所に入る認証をしたり、許可を得たり、自分でドアを開けたりすることができるようになります。それらの技術を構築すれば、ロボットによるアパートへの配達が実現するようになるでしょう。ラストワンマイル・ロジスティクスの課題をロボティクスで解決するための様々なアプローチを検証します。
家の中では、コラボレーションロボットが登場します。プライスポイントは劇的に下がり始めると思います。どの家庭にも常備されるようになるでしょう。OXAGONは、イノベーション・キャンパスにいるロボット・イノベーターたちと、リビング・ラボのような対話の機会を提供します。これにより、規模が急速に拡大し、より多くのユースケースを生み出すコミュニティが形成されます。新しい技術や新しいアプリケーションが登場するでしょう。
小売業者、物流業者、建築デザイナー。彼らは皆、新しいやり方を見に来るのです。OXAGONは確実に、他の都市が解決策を求めるトレンドセッターになるでしょう。新しい技術を導入し、効率的かつ効果的にスケールアップする方法を考えながら、しばらくはイノベーションの問題解決モードで過ごすことになるでしょう。
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何をもって、OXAGONが投資家にとって魅力的な提案であるといえるのでしょうか?
意欲的なパートナーと一緒に、次世代の製品や革新的なソリューションを創造する機会を得ることができます。NEOMは、プロトタイプ、検証、反復、サポートといった開発サイクルを通じて協力します。
つまり、フォーチュン100の企業からスタートアップ企業まで、あらゆるタイプの企業に答えを求めて来てもらいたいのです。グローバルな人材をわが社のチームに引き寄せるには?置き場所は?そのために必要な材料を見つけた場所は?」答えはNEOMであり、それを世界に証明しなければならないのです。本当にエキサイティングです。
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御社OXAGONのゴール、および目標に対するタイムラインを教えてください。
2023年末には最初の居住者が誕生する予定です。2030年には陸上の開発がすべて完了し、その時点では海上の開発の開始が非常に進んでいます。物流ソリューションは2025年までに整備され、最先端の高速鉄道や空中タクシーなどの新技術を導入しながら進歩を続けていきます。当港のコンテナ化は2022年に行われる予定で、その時には先進的な港湾総合物流施設を建設する予定です。
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将来の世代に残したい遺産は何ですか?
住みやすい環境でありながら、効率的で、企業が革新や製造を行う上で魅力的な価値を提供できること。最終的には、製造業がすべての発展した経済の中核をなしますが、ここでは次世代技術に焦点を当て、ロボット工学、宇宙、先進的な建物、スマートシティやコグニティブシティなどのハブとしての役割を果たすことを計画しています。さらに、最先端のモビリティとグリーンエネルギー。
これらはすべて、私たちが直面している実存的な課題に対処するために、今後50年から100年の間に世界が必要とする技術です。つまり、気候変動、人口増加、水不足、再生可能な資源についての話です。どの技術も非常に重要なものであり、ここで実証されれば世界中に展開されることになります。NEOMを見て、こう言ってもらえると嬉しいですね。「そう、彼らはこれらの解決策のすべてを地球に可能にしたのです」
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当プロジェクトについて、人々が抱いている一般的な誤解はありますか?また、NEOMコミュニティでの日常生活は現在どのようですか?
膨大な量の活動が行われていますが、実際に来てみると、どれだけの作業が行われているかに驚かれます。野心的なプロジェクトなので、すべてのピースをつなぐには時間がかかります。私たちは正しい方法で、できるだけ早く実行したいと考えています。
人々はそのスケールを十分に理解していません。ここに来て失敗することがリスクなのではなく、ここに来ずにこの機会を逃すことがリスクなのだと理解してもらわなければなりません。ここは世界が「次の大物」を見つけることができる場所です。来ていただいて体験していただくと、直感的に感じていただけると思います。
一方で、NEOMのコミュニティは素晴らしい場所です。素晴らしい人たちが集まってきました。非常に多くの驚くべき多様な分野から世界的な専門家が来ています。次世代のモビリティ、エネルギー、水、食品、建設、テクノロジー、健康などのソリューションを開発する上で、これらの専門家を社内に擁することができるのは、本当に恵まれた環境だと思います。
ここでの生活水準についていえば、仮設のコミュニティはすでに世界トップクラスです。生活しやすく、食べ物も良く、いつも青空で、地域の他の場所に比べて過ごしやすい気温です。湾岸協力会議の他の地域に比べて10度も涼しいというお約束通りです。
そして、数年後には最初の永住用住宅がオープンすることを楽しみにしています。最初の新しいホテルは、それよりも少し早くオープンして、お客さまをお招きし、ご案内できるようにしたいと思います。
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ご自身のプロフィールとキャリアについて、もう少し詳しく教えてください。
私はニューヨークの出身です。エンジニアで、オペレーションズ・リサーチとインダストリアル・エンジニアリングのトレーニングを受けています。私は常に、複雑なシステムと、現代社会でそれを機能させるために必要な基礎技術に魅了されてきました。それは、私が大学で学び、キャリアを通じて取り組んできたことです。
約22年間コンサルティング業務に携わり、直近では大手企業の一つであるスイスのジュネーブで M&A 業務を担当していました。製造業やサービス業など、さまざまな業界で働く機会があり、それらの業界を成功に導くさまざまな原動力を根本から理解することができました。私のキャリアや出身地を考えると、NEOMに来ることは論理的な次のステップでした。私の家族はスイスに住んでいるのですが、もうすぐ当地に学校が開校するので、家族をNEOMに呼ぶのを楽しみにしています。
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NEOMの事業としての魅力は明確ですが、当地サウジアラビアでプロジェクトに参画するに至った決め手は何でしたか?
私が初めてサウジを訪れたのは2020年の2月、つまりパンデミックが始まる直前にここに来たのだと思います。9ヶ月の長期休暇を終えて、キャリアの転換が必要になったので、その次のプロジェクトを探していました。そこで、目的があり、自分が何かを作るきっかけになるようなことをする必要があると考えました。NEOMに来るという機会、ある程度自分で仕事を作れるというチャンスを逃すのはもったいないと思いました。
私は、経済開発とビジネス開発の交差する部分にとても魅力を感じています。単に利益を上げるだけではなく、人々に良い仕事を生み出し、物事のやり方を変え、卓越した居住性を提供することが重要です。私はとても恵まれた生活環境の中で育ってきました。このような機会をここや世界の人材に提供することは、とてもエキサイティングなことだと思います。
私たちは皆、子供たちが成長し、学校に通い、良い仕事に就き、家庭を築く姿を想像できるような場所を作りたいと思っています。それは私たち全員が北極星のように持っている願いです。それが私たちのビジョンであり、人間らしさに裏打ちされた未来の住みやすい環境を創造しています。それが私の原動力であり、最初に私を惹きつけたものだと思います。率直に言って、これが私が当地にいる理由です。